勇気をくれる懐かしきコミック(ちばあきお:キャプテン)
花粉量もそろそろ多くなってきて、外に出て陽光に当たるのも良いが鼻水ズルズルは流石にちょっと不快。一年で一番良いと感じる「寒さから暖かな季節への移ろい」が、微妙に残念な季節でもある。これが僕の誕生日である(あぁ、もう53歳なのか・・)頃まで続くというのがなかなかハード。この辛さはなったものにしか分からない・・のは何でも同じかな。
さて、今でもコミックはたまに読むのである。最近のものだと映画化された「僕だけがいない街」とか「ちはやふる」とか「銀の匙」とかも。最近、「ワールドトリガー」も微妙に好き。
でも、心を揺すぶられるのはやはり少年時代に好きだった作品群である。とりわけ、「キャプテン」と関連作品の「プレイボール」は好きだった。
物語は良くある「スポ根もの」である。ただ、主人公がどこにでもいるような、普通で不器用な人間であるところが多くのスポ根ものとは違うところだろうか。最近では「根性論」など死滅して久しいが、ここに書かれている「どんな困難も諦めずに頑張る」ところがやはり魅力である。まあ、それが今の自分にとって身になっているのか・・と問われると疑問ではあるが。
この物語は、転校生だった中学生の主人公がたまたま名門野球部の出身だったことから始まる。ただし、前校では二軍の補欠。なのでどちらかと言うと「ヘタクソ」なところから始まるのである。
だが、この主人公は周囲の期待から努力をし始める。少しくらいのケガでは諦めない。とことん練習して練習して練習して・・それが徐々に身に付き、成長する姿が描かれている。昔ながらの人の見ていないところでの「陰の練習」、ストイックなまでの自身への厳しい姿は今の人達には大袈裟すぎるものであるとは思える。そして彼は「キャプテン」になるのである。
しかし、こうやってその努力が身になり、周囲から信頼を勝ち得るとともに試合でも活躍し始める姿は、やはり僕のような年齢になると自分の少年期と重なり、一途な少年の懸命な努力は心を打つものだし、更に今の自分と照らし合わせ、「自分はここまでなにかをやり遂げたことがあるのか?」との自問自答にかられる。それがこのコミックの重要な点であると思う。
同時にハラハラドキドキで勝ち進んでいくストーリー展開も楽しい。こういったエロもグロも使わない、超絶地味でストレートな描写のコミックは最近では少なくなったなと思う。時代と共に人間自身も変わっているのである(それが良いことなら心配無いのだが)。それでも今読んでも目が離せないストーリーだ。ただ、それが実生活との乖離を減らし、特別な人間の物語ではないところに現実感のある、自身の勇気を省みるチャンスを与えてくれる。そういう意味で素晴らしい作品だと感じているのだ。
この作品は1972年(僕が9歳)から始まり、キャプテンである主人公の谷口から後輩の丸井へ、そして更にイガラシへと引き継がれていく。それぞれのキャラクターや「頑張り方」も個々の性格がにじみ出ている。なるほど、頑張り方にも色々とあるなと思わせてくれる。
この物語はその後、スピンオフ作品(1978年)扱いではあるが高校生になった谷口の「また頑張る」が描かれている「プレイボール」も出ている。こちらは谷口のその後の更なる成長を見る物語だが、面白さは「キャプテン」同様、むしろ谷口の真っ直ぐで素直な性格を描く、所謂「谷口の頑張りの歴史」を好む人はこちらが好きだろう。
ちばあきお氏の作品は絵づらが今のコミックのような派手さもなく、最近の子供には地味な作品としか映らないのかも知れない。しかしこれは何歳になっても「勇気をくれる」・・そんな作品なのである。また、主人公と同年代であったこともあるだろう。そう言う意味ではロードレースを始めた頃にハマった「バリバリ伝説」なんかも同様なんだろうな。
禁句なのは分かっているが「昔は良かったなぁ・・」つい出てしまう本音である。
追記
ちばあきお氏を調べていたら、「北斗の拳」の武論尊氏に行き当たった。面白い逸話があるので貼っておきます。