南瓜の馬車 〜いいわけでも許して〜

猫とガジェットと映画と小説の毎日です。

優秀な子はどんどん転職してキャリアを磨くのが良いだろうな

明日から新しい会社に行くとのことで、先ほど若手が挨拶に来た。礼儀正しく、元気の良い青年で僕が好印象を持つ数少ない若手である。

 
ウチの職場は研究開発を生業としているとは以前に書いた気もするが、割と大きい会社なのである。色々と自由に自身のやりたいことはできるし、しっかりと計画書を作成し幹部に納得してもらえれば予算もちゃんと付く。その点では割と良い会社ではある。
 
ただ、どうしても若手の学生のノリというか・・正直に言えば大学生どころか中高生か?お前ら。と思う場面も少なくない。僕の会社でのストレスの多くは彼らの幼い行動、大きな声でワケの分からないジョーク?の応酬、それも他のメンバーをこき下ろすようなものが多い。最近のテレビの影響だろうか。まあ、僕はテレビは見ないが。
 
そんな中で彼はひときわ異彩を放っていた。大阪出身で関西弁なのが最初のインパクトなのだが、とにかく元気が良くて挨拶ができる。同じフロアにいれば誰彼構わず挨拶をしていたのは彼だけだ。普段は多少強い口調があって会議で浮き気味のことはあったが、そもそもが正論であり、言葉の選び方が未熟なだけで彼の正直さや誠実さ、優秀さはしっかりと伝わってきたものだった。
 
その彼が、転職する。あまり細かいことを訊いても問題がありそうだったので、「次はどんなことをするんだ?」と訊いただけだが、またITの世界で新しいことに挑戦するらしい。そのハッキリとした口調はとても嬉しかったのが、こういう人材がウチの会社から出てしまうのだなと思うと残念な気持ちと、若さ故の選択肢の多さに若干の嫉妬に似た気持ちを感じた。
 
まあ本音としてなんだが、彼にはウチの会社は合わない。多段になったヒエラルキーと責任体制の脆弱さのせいで、ひとつの案件を通すにも多大な労力がいる。単年度で評価される人事制度とそれによる報酬の差別化、いわゆる「能力主義」である。個人的にはこれは組織内の風通しの悪さ、悪い意味での競争の助長、余計なテンションで磨耗する人間関係の温床であると思う。
「昔は良かった」なんて言うつもりはないが、僕が入社した頃はみんなもっと和気藹々とストレスが少なく、それでいて生産性の高い職場だったと思う。今は鬱病患者となり休職や短縮勤務の社員も多い。効率化やらコスト削減、能力主義が生んだ悪しき結果だと考えている。
 
こういう職場や人事制度は短期的に成果が上がるが、長期的には人的リソースが根付かず、風通しの悪い職場は流すべき情報の欠落や生産性の低下となると考えている。あくまで僕の実感としてだが。まあ、こういう仕組みが成り立っている以上、上の立場のものには今更変えることはできないだろう。誰も犠牲(と言うとオーバーだが)になどなりたくないだろう。守る家族もいるのだから。
 
ある時、若い管理職が言った言葉が今でも耳に残っている。「ウチは技術で飯を食うんです。その社員の人となりなんて割とどうでも良いんです。」と。この年齢でなにを言っても聞かんだろうし、あぁ、そういうもんかね?と返しただけだが、このトシになって分かることもある。人がダメだったら結局ダメなモンしかできんのだよと。
 
話がだいぶ逸れた。さて、転職する子である。
 
何というか・・彼の重厚なエネルギーみたいなものは散々見ているので、実はなにも心配をしていない。近い将来。成功した彼の噂を耳にすることになるだろう。で、やっぱりそんな彼を見る僕の目は「羨望」であるのがとても残念であるのだが、是非、健康に留意し、穏やかに頑張って欲しいものだと思う。
 
ちなみに、ウチは若手の転職はヘッドハントのようなカタチで少なくはないのだが、数年前に「もの書きになります」と言って旅立った子がいた。彼もとても優秀な子だったが、今はどうしているだろうか。せめてペンネームくらい訊いておけば良かった・・と、つい思い出した。